こんにちは、埼玉県川口市で活動する買主に寄り添ったバイヤーズエージェント川口不動産情報館(リプロ)のブログ担当です。事業者の実態を知ることは「賢い住宅購入」で結構重要です。特定事業者の批判ではなく、一般的な事業者を対象に書いているので、そんな考え方もあるんだな、程度でお願いします。

手離れがいい物件=良い物件?

調査太郎「さてそれでは2番目の手離れについて説明するよ。仲介会社は手離れがいい物件の取引がしたい。」

チュースケ「手離れってなんですか?」

調査太郎「簡単に言うと、売った後に面倒なことが起きない、起こりにくいということだ。新築だと中古に比べて建物のトラブルって発生しにくいだろ?そもそも新築は売主である建築会社が建ててから10年間責任を負わないといけない法律になっている。」

チュースケ「トラブルが起きても仲介会社は面倒に巻き込まれない、というわけですね。」

調査太郎「中古物件でも売主が宅建業者の場合は、売主である宅建業者が最低2年は責任を負わないといけない。業者が売主の物件は両手になるから、仲介会社としては積極的に狙いたい物件ということになる。」

チュースケ「言い換えると、仲介会社が積極的でない物件ってなんですか?」

調査太郎「中古で売主が個人の取引だね。そもそも個人間売買については瑕疵の問題が曖昧で、トラブルになると拗れる可能性が高い。片手で買主側につく場合は、相手側に要求すればいいんだけど、自分が売主側につくと立場が危うくなる。トラブルを解決しても仲介会社が儲かるわけではないから、面倒は避けたいわけだ。」

チュースケ「なんか納得いかないなぁ。。。」

めんどくさいことは避けたい…

調査太郎「最後にめんどくさい、だ。」

チュースケ「プロとしてあり得ないと思うんですけど。」

調査太郎「わざと語弊があるように書いてるからね(笑)。でも消費者の勘違いも横行しているから、これくらいインパクトある表現の方が良いと思うよ。まず前提として、宅建業者は取引のプロであって、建物のプロではない。建物のプロは建築士だ。だから宅建業者は住宅性能について詳しくない人が多い。」

チュースケ「え、嘘ですよね。住宅のプロって言っている人多いですよ。」

調査太郎「正しくは住宅【取引】のプロだね。宅建士の定義を見てみるといい。」

チュースケ「なんかがっかりです。」

調査太郎「そう言うなよ。そのがっかりこそが勘違いだから。宅建士は不動産取引のプロだ。建物は建築士の領域。勘違いしている人が本当に多いけど、両者は区分して判断した方がいいよ。」

チュースケ「わかりました。」

調査太郎「業者の話に戻すよ。宅建業者は住宅性能には明るくない。 だから住宅性能が問題にならない物件の取引を優先したくなる。」

チュースケ「新築ですか?」

調査太郎「新築は楽だね。売主である建築会社が建物が優れていることをPRしてくれるわけだから。仲介会社が殊更プッシュする必要はない。ところが中古住宅になると、買主は不安が多いよね。」

チュースケ「雨漏れとか欠陥とか気になります。」

調査太郎「だから建物調査(インスペクション)とか瑕疵保険とかの制度があるんだけど、実際に検査などの実務を行うのは宅建業者じゃないから、手配をしないといけない。また、後から判明した情報を精査して買主に情報提供する必要もある。」

チュースケ「つまり、中古は新築に比べて宅建業者にとってめんどくさい取引になるから避けたい、ということですか。」

調査太郎「これも収益構造の問題なんだけど、建物調査や瑕疵保険なんかを手配しても、宅建業者は全然儲からない。むしろ余計なマージンを取らないように国交省が指導しているくらいだからね。中古物件は新築よりも安いだろ?手数料ビジネスは取引額が高ければ高いほど収益は大きくなるけど、物件価格が高かろうが安かろうが、契約実務にかかる手間は同じだからね。」

チュースケ「だから新築を売りたい、というわけなんですね。」

調査太郎「わざと悪目に書いたんで語弊があるのは承知なんだけど、この記事で両手仲介や新築偏重なことを問題視しているわけじゃないからね。それにこれらの問題は原因が別にある。また、企業が利益を追求するのは健全な経済活動だから。仲介手数料のモデルが問題だとも思わない。そして手間がかからず利益を追求する仲介会社の姿も、 健全な経済活動と言える。大切なのは、住宅購入者は業者が売りたい家に躍らされてはいけないということだ。」

仲介会社が「家を売る」時点で何かが間違っている

調査太郎「あまりに一般化してるから屁理屈だと言われそうだけど、そもそも仲介会社が「家を売る」と言っている時点で何かが間違っている。」

チュースケ「でもドラマのタイトルとかにもなってたじゃないですか。」

調査太郎「仲介というビジネスモデルがあまり一般消費者に馴染みがないからだと思う。仲介会社は仲介するだけだから、そもそも家を売ると言っている時点で、売主側の立ち位置というわけだ。買主の味方、もっと言うと買主だけの味方ってどこにいるんだろうね。買主の利益を一緒に追及してくれる人は、家を売るとは言わないからね。」

チュースケ「正直言うと不動産会社ってちょっと怖い印象ありますよね。ガツガツしてるというか。。。」

調査太郎「まぁ不動産の営業マンって一般的にはそんなイメージだろうね。物売りの営業マンに対する用語として、リニュアル仲介ではエージェントという表現を使っている。アメリカの不動産取引では、売主を担当するエージェントはセラーズエージェント、買主を担当するエージェントはバイヤーズエージェントと区分するところから来ている。エージェントという考え方は別の機会でご紹介するけど、リニュアル仲介は買主のためのバイヤーズエージェントサービスという位置づけで、買主の利益を最大限に追及する仲介サービスを提供しているよ。」

チュースケ「まとめると、普通の仲介会社は、めんどくさくなくて、手離れが良くて、収益の高い物件が売りたい、ということですね。」

調査太郎「その通り。事業者としてはそれが健全な経済活動だ。ただし不動産会社が儲かるかどうかなんて、買主からしたらどうでもいい話だ。そんな自社の利益のために買主が必要とする手間を省く事業者なんて買主にとってまったく必要じゃないし、むしろ害ですらある。不動産業界の構造はどうしても売主と買主で2元化するから、間に入る事業者も当然二つに分けて捉えるべきなんだ。賢い住宅購入を実現したかったら、今目の前にいるこの仲介営業マンは、売主・買主一体どちらの味方なんだろう?って視点が必要になる。不動産市場は売主主体で動く業界だから、現時点で買主だけの味方を探すのは難しいかもしれない。でも、先日まで説明した住宅ローン減税のような難しい対応をこなせる事業者こそ、買主の味方そのものなんで、「誰の味方なのか?」という視点は、業者選びで役に立つと思うよ。」

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