老人ホームへの入居が相続税を高くする?!

 平成25年度の税制改正の相続税に関して、非常に重要なキーワードのひとつは「小規模宅地等の特例」です。

自宅等土地の評価額を大幅に引き下げる特例である「小規模宅地等の特例」をご存じでしょうか?

「小規模宅地等の特例」とは、税法上、個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」といいます。

被相続人等の事業・居住用の宅地等について、他の財産と同様に課税したのでは、相続人等が事業・居住を継続できない恐れがでてきます。そこで、事業・居住を継続するという要件のもとに、高額な減額が認められています。

被相続人等の居住用に供されていた宅地等については、一定の親族が取得した場合には、240㎡まで80%減額になります。これを「特定居住用宅地等」といいます。

※平成27年1月1日以後の相続については改正予定

特にサラリーマン家庭の自宅等の居住用の宅地において「小規模宅地等の特例」が受けられるかどうかで、相続税に与える影響は非常に大きく、地価が高い都心部等では、相続税が発生するか、しないかの分かれ目にもなります。

また、この特例を受けるには、幾つかの適用条件を満たさなければなりません。適用条件の一つに相続直前の宅地等の利用状況があげられます。

利用状況で注意するべき点のひとつに、被相続人の「老人ホームへの入居」があげられます。

近年高齢者の住居形態は多様化し、生活拠点を老人ホームに移すケースは少なくありません。しかし老人ホームに入居している場合、老人ホームに入居した経緯等によっては、この特例が受けられないケースがあるのです。

今回の税制改正でも、老人ホームに入所した場合の取扱いについても触れられています。2点の要件にまとめられており、
1)介護目的で老人ホームに入所した場合で、
2)空家となった家を人に貸付けていない
場合は、特例を適用することが出来るというものです。つまり、介護目的の入所であれば問題はないけれど、元気なうちから入所したような場合は、自宅として取扱えないことになるのではないか考えられます。

このように老人ホームの入居することで、特例を受けられなくなるケースも幾つか見受けられます。それ以前に相続税が発生するか否かを大きく左右するといえるでしょう。

今後の親御さまの生活スタイルならびに相続対策を考えるなかで、覚えておかれたらいかがでしょうか。