相続税対策を考える<贈与の活用という選択肢>
皆さんは相続税対策として生前「贈与」を考えたことはありますか?
近年、財産「贈与」が増えていることはご存知でしょうか。
贈与税の申告書を提出した人は、平成20年以降年々増加し、平成20年の約35万人から、平成24年には約44万人と26%も増加しています。(国税庁調べ) 相続税が増税される前に、贈与を活用した対策をとる方が増えてきていると考えられます。
平成24年に申告された贈与税のうち、約90%のおよそ39万件が「暦年贈与」によるものでした。暦年贈与とはいわゆる‘一般的な贈与‘で、1年間(1月1日から12月31日)に個人から受け取った財産(金銭、土地等)の合計額に対して課税されます。
ポイントになるのは、この暦年贈与には年間110万円の基礎控除があり、つまり、年間110万円以下の贈与であれば、贈与税の申告も納税も必要がないということです。(暦年贈与税の計算方法は文末をご参照ください)
それでは・・と、毎年この‘基礎控除’を利用する場合には注意が必要です。
例えば、毎年分割ではあっても、まとまった金額の贈与を受けることが贈与者との間であらかじめ約束されている場合には、1年ごとの贈与とは考えられず、約束をした年に、定期金に関する権利の贈与を受けたものとして贈与税がかかりますので申告が必要になります。(参考:国税庁HPタックスアンサーNO.4402)これを「連年贈与」といいます。
したがって、同様のケースの場合は、例えば毎年新たに契約書を作成するなど、連年贈与とみなされないように工夫する必要があります。実際に毎年贈与を行う場合には、税理士等の専門家にご相談されることをお勧め致します。
また、贈与には、「相続時精算課税制度」や「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」といった、財産を円滑に次世代に渡すための制度が設けられています。制度によって要件等が異なりますので、ご自身の状況に合わせて有利な贈与の方法を選択するようにしてください。
(「相続時精算課税制度」、「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税」はこちらをクリック)
相続税の増税が2015年1月に迫るなか、「贈与」という考え方を含めた相続税対策を、いま一度、腰を据えてご検討されてみてはいかがでしょうか。なかなか話題にしづらいお話ではありますが、財産を‘渡す方’と‘受け取る方’が一緒になって考えてみられることをお勧め致します。
●暦年贈与の計算例
贈与税額=(贈与財産の価額①-110万円<基礎控除>②)×税率-控除額③
贈与税の計算は、
まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計します。・・・①
続いて、その合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。・・・②
次に、その残りの金額に税率を乗じ、控除額を差し引いて税額を計算します。・・・③
(税率および控除額は下記の贈与税の速算表をご参考下さい)
≪1≫ Aさんは父から300万円、母から200万円の贈与を受けました。
この場合、Aさんが納める贈与税額は・・・
(<300万円+200万円>-110万円)×20%[税率]-25万円[控除額]=53万円
≪2≫ Bさんは父から同じ年に50万円、20万円、30万円の贈与を受けました。
この場合、贈与財産合計が基礎控除以下なので贈与税はかかりません。
(50万円+20万円+30万円)-110万円[基礎控除]=0円
<贈与税の速算表>
基礎控除後の課税価額/税率/控除額
200万円以下/10%/————
200万円超300万円以下/15%/10万円
300万円超400万円以下/20%/25万円
400万円超600万円以下/30%/65万円
600万円超1,000万円以下/40%/125万円
1,000万円超/50%/225万円
<注意>
個人が法人から財産をもらった場合は所得税が課せられ、逆に個人が法人から財産を譲り受けた場合は、法人に対して法人税が課せられます。
また、贈与は口頭による契約も可能ですが、その場合、契約を履行しない限りいつでも取り消すことができます。