前回に続き、今回は、リバースモーゲージの貸付制度の概要についてです。

リバースモーゲージの歴史は意外と古く、国内では1981年に東京都武蔵野市が導入した「福祉資金貸付制度」が第1号。その後、世田谷区や神戸市など、都市部の自治体を中心に取り扱いの輪が広がっていきました。現在では、厚生労働省が2002年より全国の社会福祉協議会を通じた貸付制度を設けているほか、都市銀行、信託、地方銀行、信用金庫等民間金融機関にも拡大しつつあります。

また、トヨタホーム、旭化成等の大手住宅会社なども自社住宅の販促・住み替え促進や団塊ジュニアによる新築ブーム終焉後を睨んだ戦略からリバースモーゲージの商品開発が進んでいます。

ここで、公的制度と民間タイプの大きな違いは、公的制度は、福祉性が強く、民間タイプは、老後生活を充実させ理為の補完性が強い商品となっていることです。その利用目的やサービス内容は大きく異なります。

ここでは、代表的公的制度と民間タイプのリバースモーゲージを例に比較してみました。

分類 公的 公的 民間
主体 武蔵野市(社会福祉協議会)S56年~ 厚生労働省(長期生活支援資金貸付制度)H14年~ みずほ銀行
利用者対象 市内に1年以上居住で概ね65歳以上、福祉公社の家事援助サービス利用者 65歳以上、住民税非課税者の低所得者 55歳以上
利用使途 福祉公社の在宅福祉サービス、生活費、医療費、住宅改良費等 生活資金 自由
担保 マンションは専有面積50㎡以上、築年数13年以内担保評価額の下限なし 戸建住宅のみ

土地評価額1000万円以上目安

東京・神奈川・千葉・埼玉

土地評価額2000万円以上

マンション1坪当たり250万円以上かつ総額5,000万円以上となる物件

融資限度額 土地:時価80%以内

マンション:50%以内

土地:評価額の70%程度

1月当たり30万円以内

1,000万円以上2億円以内(100万円単位)、かつご自宅の評価額以内となります。
借入期間 終身(ただし担保割れの時点で打ち切り) 貸付元利金(貸付金+利子)が貸付限度額に達するまでの期間

 

 
適用金利 固定金利 年3%または銀行長期最優遇貸出金利のいずれか低い利率  
返済方法 本人死亡時、担保物件を換金して返済、または相続人が一括返済 1ヶ月あたり30万円以内で個別に設定

 

 


厚生労働省の「長期生活支援資金貸付制度」は、平成14年12月に創設され、土地資産を持ちながら低所得であるような65歳以上の高齢者世帯を対象として、生活資金や医療費等の貸付けを行なうという制度であり、平成15年4月以降、全国の各都道府県社会福祉協議会において順次導入・実施されています。
利用者は「世帯構成員の年齢が65歳以上」「住民税が非課税」などの要件が設けられており、一定額以上の収入がある人は申し込むことができません。また必要な資金は、1ヵ月30万円を上限に、3ヵ月に1度まとめて受け取る年金形式”になっていて、生活資金の補完的な役割を果たしています。

また、みずほ銀行のリバースモーゲージは、主により充実したシニアライフをおくるためのローンで、相応の金融資産をすでに保有し、かつ、年金などの安定した収入がある人を対象にしています。また融資金額(貸越極度額)も、1千万円~2億円と高めに設定しているので、それに見合う資産価値の高い持ち家を保有していることも条件です。そのため現状では、持ち家の所在地を東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県の1都3県に限定しています。

ただ、まとまったお金を借りることができる分、お金の使い道は大きく広がります。必要な時にいつでも融資を受けることができますし、一般に数百万円~数千万円単位でかかる高齢者施設への入居一時金や自宅のリフォーム資金に充てることも可能です。特に、「持ち家を子どもに残さず、自分のために使いたい」「独身で相続人がいないため、自分の代で資産を使い切りたい」と考えている人にとっては、有効な選択肢のひとつと言えそうです。

このように、リバースモーゲージを利用するにあたり、どのようなシニアライフを過ごしたいのか等のライフプランが重要となりますので、その際には、FP等の専門家に相談することも必要と思われます。

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